ありたい自分の実現を応援するメンタルトレーニング

自己肯定感が低い部下にリーダーはどう対応すればいいのか?

 

こんにちは^_^

仙台のメンタルトレーナー吉田です。

 

自治体や企業でマネジメントや、人事評価に関するテーマの研修をしていると、

「職場のかまってちゃん」をどうマネジメントしていけばいいのかという

相談を受けることが増えています。

 

 

ちなみに、研修で相談を受ける「職場のかまってちゃん」の人物像の

特徴を挙げてみると、

 

☑︎自分に注目して貰うことが目的で行動を起こす人

☑︎自己顕示欲、承認欲求が非常に強い人

☑︎注目を浴びるためなら迷惑行為も厭わない人

☑︎自分が一番頑張っているし、一番評価されるべきと信じて疑わない人

こんなイメージです。

 

具体的には、わざと嘘をついたり、納期を守らなかったり、

相手を傷つけるようなことを言ったり、逆にわざと自分を傷つけてみたり…

 

 

かまってもらうための方法論は色々のようですが、

いずれにしても、人からとにかく認められたいという欲求が過剰に強いせいで、

何かとトラブルを引き起こしてしまうのが職場のかまってちゃんです。

 

 

人が持っている6つの欲求とは

 

 

人が抱えるさまざまな「欲求」について、とくによく知られているのが

心理学者、アブラハム・マズローによる「欲求5段階説」です。

 

 

 

 

・生理的欲求…飲食、排泄、睡眠など、生きるための欲求のこと

・安全欲求…衣食住の確保や養育者の存在など、安全に暮らすための欲求のこと

・承認(尊厳)欲求…認めてもらいたい、尊重してもらいたいという欲求のこと

・社会的欲求…所属と愛情の欲求とも呼ばれ、集団への所属や愛情の欲求のこと

・自己実現欲求…自分の能力を引き出したり、潜在的な可能性を求める欲求のこと

・自己超越欲求…利害や自我を超えてただ目的のみに没頭するという領域

 

 

人はピラミッド図の一番下から欲求が生まれ、その欲求がある程度満たされると

次の上位階層の欲求が生じるという考え方です。

※マズローは晩年に「5つの欲求」がすべて満たされると、欲求は6番目の領域に入ると言っているため、図も6段階にしています。

 

 

このように、誰にでも「自分の存在を認めてほしい」という欲求があります。

 

家族やパートナー、友人に、無条件に受け入れて欲しいと願うのも承認欲求ですし、

SNSに投稿した記事に「いいね」の数が増えると嬉しくなるのも承認欲求が

満たされたと感じるからですね。

 

 

仕事においても、人は承認を求めます。

 

 

特に組織で仕事をしているのであれば、

「もっと自分の能力に合う役割が欲しい」「昇進、昇給したい」

「もっと大きな権限が欲しい」などの欲求を叶えるためには、

自分を評価してくれる『他者』の承認を勝ち得るしかないのです。

 

 

こんなふうに、承認欲求は仕事に対する個々人のモチベーションを

上げるために重要な役割を担っており、そのおかげで困難な目標にも果敢に

チャレンジしていこうという勇気が湧いてくるのです。

 

 

なぜ過剰に承認欲求が強くなってしまうのか

 

 

本来は自己実現に向けて自分を奮いたたせるモチベーションになるはずの承認欲求。

 

それがなぜ、周りに迷惑をかけるなどしてまで、「自分を認めてほしい」と

渇望してくる人がいるのでしょうか?

 

それは自己肯定感の低さが関係しているのです。

 

 

自己肯定感とは、

なにかを知っていても、知らなくても…

なにかができても、できなくても…

なにかをしていても、していなくても…

「自分なら大丈夫」「自分という存在には価値がある」と自分のことを肯定的に認めて信じられる個人的な感覚

のことです。

 

 

過剰に他者に認めて欲しいという欲求の背景には、

実は自己肯定感が低くて自分で自分のことを認めることができないから

他人に認めて欲しいという心理があるのです。

 

 

自己肯定感が低いと、いくら上司が「ありがとう」と労いの言葉を伝えても、

「どうせ本当は自分の仕事ぶりなんて評価してもらえていないはず」などと

考えてしまい、素直に感謝を受け入れられません。

 

 

また、自己肯定感が低いと、「どうせ頑張ったって自分は役に立てっこない」と

行動を諦め無気力状態になったり、うまくいかない理由を他人のせいにしてみたり、

うまくいっている人に嫉妬して足を引っ張ろうとしてみたり…

と、何かと周囲とトラブルを引き起こしがちです。

 

 

次に職場で見かけることの多い、過剰な承認欲求が引き起こす

トラブル事例をいくつかみてみましょう。

 

 

かまってちゃんの問題行動事例

 

 

事例1:周りに心配をかけることで承認欲求を満たす
 

ちょっとでも仕事がうまくいかなかったりすると、「もう辞めます」などと言っては

そのたびに上司から引き留めてもらうことで承認欲求を満たそうとする…。

 

また、事あるごとに「具合が悪そうに振る舞う」ことで、

周りから注目を浴びようとするのも似た事例と言えます。

 

最初は驚いたり親身になって心配したりしていた周りの人も、

次第に「ああ、またいつものアレね」と慣れっこになっていくので、

さらに注目を浴びようと周りにかける心配事を

徐々にエスカレートさせていく傾向があり、

上司としては本来やるべきことに集中できなくなります

 

 

事例2:他者の評価を下げることで自分を優位に立たせる


自己肯定感が低いと、自分の存在価値をアピールすることが苦手です。

そこで、自分の存在価値をアピールするのではなく、他者の存在価値を

引き下げることによって相対的に自分の存在価値を高めようと行動します。

 

他者が成功した時には無視しておきながら、他者が失敗するとことさら大きく

騒ぎ立てる…。

 

職場の人間関係が悪化する原因の一つであり、悪化した人間関係を修復するには

相当なエネルギーを要するため、上司としては早めに手を打つ必要があります。

 

 

事例3:被害者意識への共感を強要する
 

自分の思い通りにことが進まないとき、自己否定されたと解釈して、

否定されたことに対する不平不満、愚痴、泣き言、怒りのなど、

被害者感情を周囲にまき散らします。

また、被害者感情に共感を強要するため、職場全体の士気も低下します。

 

タチが悪くなると、いかに自分が被害者として大変な目にあっているかを

SNSなどに投稿し、組織全体の風評被害などにつながる恐れもあります。

 

 

事例4:周りに無気力ムードを撒き散らす

 

自己肯定感が低いため「どうせ頑張ったところで…」と、

行動する前から悲観的に諦め、周囲にその無気力さを伝染させてしまいます。

 

案外少なくないのは、過去には、その人なりに頑張ったことがあったのに、

たまたま結果が出なかった体験や、その時の上司に評価してもらえなかった

「挫折体験」がいくつか重なったせいで勇気をくじかれ無気力化してしまったという

残念なケースもあります。

 

無気力さは目には見えなくても周囲に伝染し、

職場の生産性を低下させることになります。

 

 

 

ここまで、ざっと典型的な事例をみてきましたが、

こういった事例に登場するような部下の方には

どのように接すればいいのでしょうか?

 

 

承認欲求が強すぎる部下への対処法

 

 

「認めて欲しい」「認められたい」という承認欲求は、私たちが前向きに

努力を重ねるためのエネルギーとなるものです。

 

ですから、承認欲求が強すぎる”かまってちゃん”とネガティブに考えるのではなく、

「なんらかの理由で自己肯定感が低くなっている心理的なサポートが必要な人」

と考えてみると、おのずと対処法が見えてきます。

 

 

ここではコミュニケーションのポイントを3つお話しします。

 

 

1)自分の居場所を実感できるコミュニケーション

 

自己肯定感が低いからといって、無理に褒めたり過剰に配慮したりすることは、

余計にその部下を傷つける場合があります。

 

そうではなくて、「あなたという存在を気にかけてるから安心してね」という

メッセージを事あるごとに発信することで、

「自分の居場所はここで大丈夫なんだ」と実感してもらえるような

コミュニケーションを心がけましょう。

 

具体的には、仕事中に手が止まっていたり、様子が気になった時には、

「◯◯さん、なにか困ったことでもあったかな?」など、

声がけをしていくのです。

 

この時、部下が被害者意識の共感を求めて来たとしても、

被害者意識に引っ張られることなく、

「なるほど、◯◯さんはそんなふうに考えているんだね?」とさらりとかわしつつ、

「例えばこれこれこういう視点から考えてみたらどうなんだろう?」など、

被害者視点とは違った肯定的で主体的な視点の問いかけをしましょう。

 

 

2)貢献できていると実感できるコミュニケーション

 

自己肯定感が低い状態だと、実際に周りの役に立っていたとしても

無意識に「どうせ自分なんて…」といった自分を否定する方向で考えがちです。

 

ですから、ちゃんと貢献できているというメッセージを、

繰り返し発信していく必要があります。

 

具体的には、

「◯◯さんが△△してくれたおかげで助かったよ。ありがとう」と、

労いや感謝の言葉をきちんと伝えてあげるのです。

 

また、ともすると本人の努力だけではコントロールできない面もある

仕事の結果よりも、本人の努力でコントロールできるプロセス部分に着目します。

 

「これこれ、こういうところのアイディがすごくいいね」など、

万が一うまくいかなかった結果になったとしても、結果の出来栄えだけではなく

中身に着目することで、部下の「貢献実感」を高めていくのです。

 

 

3)頼っても大丈夫だと実感できるコミュニケーション

 

自己肯定感が低いと「相談することは迷惑をかけること」と考えがちです。

誰にも頼ることができないから、仕事は滞留する一方です。

それでも誰かに相談することは「悪」だと思い込んでいるので、

仕事を効率的に進められない自分に対してどんどん自信を失ってしまいます。

 

かといって、なんでもかんでも頼らせてしまうと自立できません。

 

あくまでも上司と部下の一線は引いた上で、

・相談するということは上司を安心させるということ

・相談することで自己成長が加速できる

・相談しても自分の価値は下がらない

こうしたことを実感してもらうようなコミュニケーションを心がけましょう。

 

具体的には、

 

「◯◯について、こうやって早めに相談してくれて助かったよ」

と感謝の言葉を伝えたり、

 

「例えば、こういうやり方と、こういうやり方も考えられるけど、

 ◯◯さんなら、どんなやり方がいいと思う?」

と部下が気づいていない選択肢を広げてあげたりと、

 

「上司を頼っても大丈夫」というメッセージを発信し続けるのです。

 

 

まとめ

 

「自分は自分なりに貢献できてるし、そこそこ信頼されているかも…」

「自分の居場所はここでいいのかも…」

「周りの人は敵じゃなくて協力してくれる味方かも…」

こんなふうに職場環境に安心感を持てるようになると、

少しずつ自己肯定感は増していきます。

 

自分のことを肯定的に信じられるようになると、

他者のことも肯定的に認めることができるようになるので、

過剰な承認欲求は次第におさまってくるでしょう。

 

そして承認欲求が満たされれば、次の欲求段階である「自己実現の欲求」が高まるので、

自然にモチベーションを持った仕事への取り組み姿勢が醸成されるでしょう。

 

 

 

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